サクラ大戦

『マリアとカンナと』


「マリア、そっちの皿取って?」
「はい」
「ん、ありがと」
 カンナはマリアから大皿を受け取ると、慣れた手付きでフライパンの中に出来上がった料理を皿に移す。湯気を立てる出来立ての料理に、カンナとマリアは満面の笑みを浮かべた。
「こんだけあれば足りんだろ」
「ちょっと作り過ぎの気もするけど」
「良いの良いの、あたいが食うし。よっし! 行こっか」
 カンナがいうと、マリアは人差し指を唇に宛てて「静かに」と合図をした。そうだった、とカンナは肩を竦め、大きな盆に料理や小皿等を乗せて持ち上げた。マリアも別の盆にグラスや瓶を乗せた。カンナが先に出口に立ち、廊下に顔を突き出して辺りを伺う。誰もいないのを確認すると、二人は盆の上の物に気を配りながら、キッチンを飛び出し、一目散に階段を駆け上がった。そして、かえでの部屋の扉をノック代わりにカンナが蹴る。両手が塞がっているので仕方がないのだ。かえでは無言で勢い良く扉を開くと、ふたりはさっと部屋に身体を滑り込ませた。
「お待たせ、かえでさん!」
 自分の声量を理解していないカンナが興奮気味に声を上げ、二人は同時に「しぃっ!」と指を立てた。
「あ、やべぇやべぇ」
 言いながら、カンナは部屋の真ん中に盆を下ろした。
「ふふ、美味しそう! 待ってました!」
 ふわりと薫る料理に頬を紅潮させ、かえでは床に腰を下ろした。盆の上には、カンナの作ったゴーヤチャンプルとマリアの作ったサーモンマリネ。それにスルメやおかき、チョコレートなんかもある。
「こちらもお待ちかねですよね?」
 かちゃんと音を立てて、マリアも盆を置く。そこには、数種類の酒の瓶。ワイン、ブランデー、ラム、焼酎にウォッカに古酒<くーすー>まで用意されている。
「流石ね!」
 思わず声を上げたかえでに、二人揃って「しぃっ!」。三人は、顔を見合わせて笑った。
「最初はこれから」
 マリアはアルコール度数の低い白ワインを三つのワイングラスに注ぐ。三人は同時にグラスを取った。
「じゃぁ、改めて、今年も宜しく!」
 かちん、と軽い音がかえでの部屋に響いた。
 帝劇の誰もが寝静まり、大神の見回りも終わった丑三つ時、三人は秘密の新年会を開いている。他のメンバーに知られたら、参加したいと言い出すに違いない。勿論、みんなで飲むのも楽しいのだが、偶には同年代の者同士、少人数で飲みたい時もある。特にみんなに秘密でとなると、それだけでわくわくするものだ。
「ところで、かえでさん、加山隊長からのクリスマスプレゼント、なんだったんですか?」
「ごほっ」
 二杯目に赤ワインをカンナに注いでもらい、マリネを摘みながら上機嫌だったかえでは、いきなりの質問に咳き込んだ。
「なっ……ちょっ……何で知ってるの?」
「ふふ、情報源は秘密です」
「何、加山隊長がどうしたって? え、かえでさんと加山隊長、もしかして……」
「え、カンナ、それも知らなかったの? 二人は――」
「マリアっ!」
 咄嗟に叫んだかえでに、またも二人は「しぃっ!」。
「騒いだらみんなにばれちゃいますよ。静かにいきましょう、かえでさん」
「こんな風に動揺するかえでさん、初めてだなぁ……。色々じっくり詳しく聞かしてもらおうかな」
 カンナとマリアはにんまりと笑い、かえでのグラスにウォッカを注いだ。
 三人の宴は、これからが本番である。


広告 [PR]スキンケア  転職 化粧品 無料 ライブチャット