亡骸


悲しいリズム
私の心臓がずっと刻んでいる
何よりも悲しいリズム

貴方のリズムが止まった時
私は何故か歌えなくなった
私は自分のリズムじゃ歌えない事に気付いた
貴方のリズムじゃないと私は歌えない
長い間 気付かなかった事
貴方がどれ程必要かという事
気付かずに入られたなら
私はもっと楽だったのか……

貴方のリズムが止まって
貴方の身体を抱き締めて
自分の身体の温かさを恨んだ
貴方がみるみる冷たくなってゆくのに
貴方の身体が凍り付いてゆくのに
自分だけがいつまでもリズムを刻み
自分だけがいつまでも温かいのが
貴方を失くした証明だと知った


気がついたら 私は一人だった
私の周りには誰もいなくなっていた
気がついたら リズムはたった一つだった
私の周りのリズムは 全部止まっていた
私以外のリズムは 全部止まっていた

貴方の歌が聞こえない
誰の歌も もう聞こえない
私一人じゃ歌えない
貴方がいないとうたえない
皆がいないと歌えない
私のリズムも 止まれば良いのに――

貴方の身体を抱き締めて
貴方の胸に耳を近づける
どうして私は一人なの?
貴方はどうして答えてくれないの?


遠くに誰かいる
誰かが銃を構えている
誰かが近寄ってくる
足落ちが近付いてくる
私を殺そうと 近付いてくる――


あれから五年が過ぎて
私は今 歌っている
貴方のリズムは何処にもないのに
私は今でも歌っている

私は今でも――忘れていない
私はずっと忘れない
貴方のリズムを
貴方の身体が冷たくなったあの日を
貴方を失った あの日を

貴方を初めて抱き締めた あの日を――

「亡骸」――二度とリズムを刻む事のない貴方を抱き締める。
貴方がいないと歌えないはずだったのに。
だけど、忘れないから。傍らの音楽と、慈しむ愛を。

マリアの、密かな記憶。
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