人形


 街角のショウウィンドウの中に、ちょこんと座ってるお人形。
 あれが欲しいな。
 思っても、口には出しません。
 昔、とてもとても怒られた事があるんです。
 私、口にはだせません。

 私は、オトコノコだから。

 どんなスカートをはいたって。
 どんなにお化粧したって。
 どんな風に喋ったって。

 私は、オトコノコ。


 運命は自分で変える事が出来るんだって、誰かが言いました。
 だけど宿命は変えられないのだと。
 これから生きてゆく道を自分で選んでゆけるけれど。
 だけど私がオトコノコであることは変えられないんです。


 街角のショウウィンドウの中で、にっこり笑ってるお人形。
 あれが欲しいな。
 思っても、口には出せません。
 決して、口にしてはいけない言葉があるんです。
 絶対に、誰にも言いません。
 だけど、思ってもいいでしょう?

 たとえ、オトコノコでも。

 だって、とっても可愛くて。
 だって、とっても美しくて。
 だって、私、オトコノコ……だけど……

 私、ニンゲンだから。

 なにか望んでも良いでしょう?
 あのお人形を抱き締めて幸せな気持ちを味わいたい。
 そんな風に望んだって、いいでしょう?


 たとえ変えられない事があったって。
 こうなったら良いなって思うことはあっても良いでしょう?
 オンナノコになりたかったって。
 思っても良いでしょう?
 思うだけなら、良いでしょう?


 街角のショウウィンドウの中で、じっと黙ってるお人形。
 私も、じっと黙ってる。


 私は、オトコノコだから。


「人形」のような、自由に生きられないニンゲン。
規律で縛られた軍隊にいて、それでも自由を望む事。
たとえ人と違っていても、それがニンゲンてものだから。

菊之丞の、密かな想い。
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