1/2〜恵編〜

 神様は何も禁止なんかしてない。
 “愛してる”――


   1/2


 いつか裁かれる日が来ても、例えこの罪が故に命を奪われるとしても、それまで償い、生き続ける――
 私の心に燈した誓いであり、希望。それを示してくれたのは、“彼”だった。

 私は、闇の中に立っていた。それは正に。微かな光りもない闇の中に、私はたったひとりで立ち尽くしている。悪寒がした。心臓が早鐘を打つ。
 ふと、背後に人の気配を感じた。一瞬、安堵を覚えたが、それはすぐに恐怖に変わる。その気配は冷たく、私の体温を奪うようで。
 逃げてはいけない。そう思った。罪を償い、生きるのだ。歯を喰い縛り、両手を胸に当ててゆっくりと呼吸を繰り返すと、指先に仄かな熱を感じた。見ると、手の中に柔らかな光の球が生まれていた。
 今度こそ安堵が私を包み、熱が身体を駆け巡る。
 もう怖いものなどない。この光を守って生きるのだ。顔を上げ、背中に感じる冷たい気配に対峙せんと振り返った時、黒く長い腕が光を握り潰した。顔は見えなかった。ただ、暗い男だった。男の向こうに、眼鏡をかけ、卑しい笑みを浮かべた男が立っていた。にたにたと笑う男の視線は、私の足元に向けられていた。私はゆっくりと足元を見る。そこに、ひとりの男が横たわっていた。俯せになって顔は見えなかったが、背中からは涌き水のように血が溢れ出し、私を爪先から赤く染めた。
「……っ…………」
 唇を動かしても声にはならない。暗く冷たい男の向こうでは、眼鏡の男の顔面に益々気味悪い笑みが浮かんでいた。
「恵」
 誰かが言った。ふたりのどちらでもない、だれかが。
 闇が、瞬く間に私を被い尽くす。もう、指先さえ見えはしない。
「恵」
 闇の中で、誰かが呼ぶ。
「恵、おい、恵!」
 肩を揺すられ、思わず息を止めると、眩しい程の光が飛び込んできた。いつもと違う天井。いつもと違う空気。
「恵……?」
 声をかけて私を覗き込むのは、目付きの悪い青年だった。
 どこなの、ここは? この人は誰?
 私は慌てて身体を起こし、後じさった。
「ここは……?」
「は?」
 男は怪訝に眉を寄せる。距離を取って呼吸を整えると、漸く頭が冷静さを取り戻してきた。
「相……楽……左之助……」
 相楽左之助。そうだ、彼は、町外れの長屋に住んでいる青年。十日前、私を助けてくれた人達のひとりだ。
「おう……どした、恵?」
 彼は、私の顔を覗き込む。私は、夢――そう、あれは夢だったのだ――に出てきた眼鏡の男に捕らえられ、医者として身につけた知識と技術で阿片の精製を強いられてきた。私の作った阿片で友人を失った彼は、最初は私を拒絶していた。当たり前だ。それでも、今は私を受け入れてくれている。私も気が強いし、お互い捻くれているというか、素直ではないところがあるためか、他愛もないことでぶつかる。けれどぶつかれるのも、互いに心を開いているからだろう。この十日、怪我の治療をしたりタダ飯を食べていったりと、毎日のように顔を合わせている。私は兄ふたりに守られてきた末っ子だけれど、彼はまるで弟のような存在だ。
「なんでもないわ。それより、あんたはどうしたの?」
 業とはぐらかし、私は彼から顔を背けた。
「たまたま近く来たから寄ったんだよ」
 きっと、神谷道場が留守だったのだ。今日は確か出稽古だといっていた。
「そしたら、お前が身体壊して寝込んでるって言うしよ。じいさんは往診があるってんで、留守番任されたんだ」
「……玄斎先生ってば」
 思わず溜息が漏れた。確かに体調を崩したのは私が悪いし、それで玄斎先生に迷惑をかけているのも事実だ。寝込んでいる私を置いて出ることが憚られるのも解る。けれど、彼は若い男で、私は女なのだから間違いが起こらないとも限らない。彼が、間違いを犯す可能性は十分にある――というのは、過剰な自信ではなく、医者としての分析だ。
「お前が休んでるからって、手を出したらただじゃすまないって、すげー形相で睨まれた。まだ十日だっつーのに、すっかり父親面してんな、あのじいさん」
 父親……?
 まさかそんなこと、と思ったけれど、解らないわけではない。玄斎先生は娘のように、私を慈しんでくれている。医者にとって“生きる見本”と言われた私の父を、玄斎先生は心から尊敬していると言っていた。その娘だからかも知れないけれど、玄斎先生の優しさや温かさが有り難い。
「…………そう。ねぇ、私はもう大丈夫よ。有り難う。悪いけど、今日は帰ってくれない? 何か食べたければ、台所の戸棚に頂いたお菓子があるから」
「お、邪魔か?」
 左之助は私の肩に手を掛けた。咄嗟にその手を払いのけると、不意に視線が交わった。私は勢い良く顔を背ける。
「……見ないで。今は私を見ないで頂戴」
「恵……」
 左之助の逡巡が伝わった。素直に帰るとは思わなかったけれど、黙っていれば諦めるだろうと思った。
 でも。
 左之助はそこにいた。黙って、背を向けて座っていた。
「ちょっと!」
「残念だったな、俺はそう言われて帰れるほど素直に育っちゃいねーんだ」
「何よ、『此処に居て』って言ったら帰ってくれるの?」
「言えるもんなら言ってみろ」
 彼の背中が笑っている。大きな背中。薄着だからか、布地越しにもその背中の逞しさが解る。父も兄も決して筋肉質ではなかった。父は大柄な人だったけれどやはり線は細かったから、こんなに筋骨隆々の背中を間近に見たことはないように思う。剣さん――私を助け、生きる道を示してくれた緋村剣心――も、剣術家の割に小柄で細身だ。私が武田観柳に捕らえられていた時に、観柳の護衛をしていた元隠密御庭番衆の五人の中には、肥満体のひょっとこと、筋肉増強の秘薬を飲んだという式尉という巨躯がいた。あまり間近で見たことはないものの、ひょっとこはともかく、式尉のあからさまに隆々とした筋肉より、左之助の筋肉の方が質は良い。医者の私に言わせれば、筋肉増強の薬など、大して良いものではないのだ。左之助の方が、余程利に適ったしなやかな筋肉を持っている。御庭番の御頭の四乃森蒼紫に似ているかも知れない――そう思うと、途端に悪寒が背筋を走った。
 息を飲み、咄嗟に顔を上げた瞬間、再び視界に彼の背中。厳ついくせに、優しくおおらかな背中。そして大きく、『惡』の一文字。私も同じく、背中に『惡』を背負っている。自分の正義のために惡の名を負った彼と、命惜しさに惡に身を沈めた私とではその意味も価値も全く違うのだけれど。私の中の惡さえ許すと言ってくれた。この背中で、受け止めてくれた。何故だろう、ほっとする……。
 何も考えることもせず、私は彼の背中にもたれ掛かった。頬に彼の熱が伝わる。俄かに左之助の身体が震え、思わず、彼の脇腹の辺りに手を回して服の裾を掴んだ。
「恵……?」
 微かに上擦った声。
「ごめんなさい……少しだけ……」
「あぁ……」
 温かくて、穏やかな心地がする。けれど目を閉じると、夢の中のことが思い出された。背中から血を流し、横たわる男。それが、剣さんだったように思えて、胸が潰れそうになった。そうではないことは解っている。ただ、“彼”が現れた事はこれまでになく、“彼”に重なる剣さんの姿が、存在が大きくなってゆく。
 十日前の一件。あれから何度も――殆ど毎晩のように――似た悪夢を見る。私を助けに来た剣さんが蒼紫に斬られたり、彼を慕う神谷道場の師範代の薫さんに罵られたり。回転式機関砲<ガトリングガン>の砲撃音が耳に響いて眠れない夜もあった。剣さんや薫さんや神谷道場の門下生の明神弥彦君、玄斎先生、それに蒼紫や御庭番の男達が次々に倒れてゆく夢も見た。怖くて堪らなかった。不思議と、左之助が現れることはない。一番、剣さんの夢を見た。私は多分……怖いのだ。自らの命を的にしてまで、敵の生きる目的を保とうとする、優し過ぎる生き方を選んだ彼が、いつか私の目の前から消えてしまうことが。
 解ってる。私は、剣さんが好きなのだ。愛している。失ったらと思う度、胸が締め付けられる。
「好き」
「…………は?」
「私……好きだわ、剣さんの事が。剣さんが、好き」
「知ってる」
 呆れたような左之助の声。私は彼の服から手を離し、背中から離れようとした。しかし、彼は決して私を振り向かず、その手を引き寄せた。
「まぁ、暫くそうしてろ」
「天の邪鬼!」
「おめぇもな。……で、どうした?」
 何故か、理由は解らないけれど、涙が零れた。だけど苦しいとか辛いとか、そういう涙ではなくて。穏やかな心地がした。
「こんな気持ちは初めてなのよ。剣さんが好きで……」
 身体が、頬が、熱くなるのを感じた。「好き」と口にする度、鼓動が早鐘を打つ。
「二十二にもなって、初めてとは……意外と乙女だな」
「煩いわね!」
 私は、どん、と左之助の背中を叩いた。左之助は笑いながら、それでももう一方の手を離そうとはしなかった。
「良いじゃねぇか。仕方ねぇのも解るしな」
 仕方ないといえば、そうかも知れない。けれど、その状況を作り出した責任は私にもある。
「……剣さんを、守りたい。もう、失いたくないわ」
「剣心を“守る”って? そいつはまた……」
 左之助はからかうようにくっくっと笑った。確かに、日本で最強と謳われる剣客を“守る”なんて、剣も握れない私には甚だ不似合いな言葉だ。だけど、それしか思い付かない。私は彼を守りたい。彼が私を救ってくれたのだから、今度は私が彼のために力を尽くしたい。滑稽でも構わない。
「……そいつは……お前にしか出来ないかもな」
「は?」
「剣心の命守るなんて、医者のお前にしか出来ねぇだろ」
「…………」
 あぁ、全くこの男は。
 この男は、全く、馬鹿のくせに時々そういうこと言うから嫌なのよ。「そうしたらダチのこと許してやるよ」って、あの言葉。私を“阿片女”と罵った男のあの言葉に、胸が詰まった。あの時と同じくらい嬉しくて。鼓動がどんどん早くなる。
「馬鹿……」
「他に言うことねぇのかよ」
 ないわよ。言えるわけがない。
 嬉しいとか、ありがとうなんて、今は言えない。無理矢理手を解いて、もう片方の手で包み込むように胸の前で握った。確かに、私も大概天の邪鬼だわ。
 左之助の背中にもたれ直す。耳をつけている背中から、左之助の鼓動が響いた。まるで一つの心音を聞いているかのように、私と同じ早さで脈打っている。
「けど……だとしたら、こんなところで止まっている場合じゃないわね……」
「休まなきゃいけないときはしっかり休んどけ。倒れたんじゃ、話になんねぇからな」
「そうね……」
 身体が、気持ちが、ほんのりと熱を帯びて、なんだか眠たくなってきた。
 目を閉じると、そこは闇ではなく。柔らかな夕陽の光を浴びて、夕陽と同じ赤い髪をたなびかせる彼が微笑んでいた。
 好きよ、貴方が……。少女の頃に経験出来なかったこんな気持ちを、今になって感じるなんて。
 守りたい。これからなにがあろうと、貴方の示してくれた“医者”としての道を歩みながら。貴方を、守りたい。




 次に目を開いた時には、障子の隙間から夕陽が差していた。身体が随分軽い。左之助の姿はなかった。私は手早く身支度を整えて部屋を出た。廊下で、台所の方から戻ってきた玄斎先生とかちあった。
「……お帰りなさい、先生」
「起きて大丈夫なのかい?」
「はい、もうすっかり。ご迷惑をおかけしました」
 私は玄斎先生に頭を下げた。
「いやいや、そんなこと気にせんでおくれ」
「……ありがとうございます。ところで……左之助は……?」
「ついさっきまでいたんじゃが、帰ったようじゃの。儂が戻るまで待ってくれとったようじゃ。菓子を食べるかと言ったんじゃが……食べずに帰ったから、今日の礼にちょっと届けて来るよ。留守を頼んで良いかい?」
 玄斎先生は、手にしていた小さな風呂敷包みを私に揺らして見せた。
「でしたら、私が行きます。お礼を言わないといけないのは私ですし、少し外の風に当たりたいんです」
「そうかい? そうじゃな、ずっと部屋に篭っているのも良くない。顔色も良さそうじゃし、散歩がてら行ってきてくれるかね」
「はい」
 私は先生から包みを受け取ると、長屋へ向かった。多少急いだところで左之助に追い付くことはないと思ったけれど、気が付くと、いつもより早足になっていた。
 川沿いの道は夕陽に照らされて、きらきらと輝く川面が眩しい程だった。その川沿いの往来で、『惡』の一文字を見付けた。その背中は進むことなくその場に立ち尽くし、彼の瞳は川の反対側の往来を見詰めていた。つられるように、そちらに視線をやる。
 彼の視線の先には、神谷道場に住まう面々の姿があった。剣さんと薫さんと弥彦君が、並んで歩いている。出稽古の帰りのようで、薫さんも弥彦君も稽古着姿で大荷物を担いでいる。何故、声をかけないのか。そして私も、何故、彼に声をかけないのだろうか……。彼には、今、声をかけてはならないような異様な雰囲気が漂っていた。彼の視線が動く。薫さんの荷物の袋に結ばれていた鈴が落ちて転がり、彼女が追い駆けたのだ。左之助は、薫さんを見ていた。
 ああ……そういうことか。
 脇の道から少し回り道をして長屋に向かおう。もし帰っていなかったら、一筆残してそのまま帰ろうと考えたその時、川の向こうから声がした。
「お、左之助ー、恵ー!」
 弥彦君がこちらに気付いたらしい。剣さんと薫さんもこちらを見た。左之助も、振り返った。
「……どうした? 起きて大丈夫か?」
「ええ……お蔭様でね。さっきはありがとう。お菓子も食べずに帰ったって言うから、お礼に持ってきたわ」
「左之ー、恵殿ー、夕餉を食べて行かぬでござるかー?」
 剣さんが声を張り上げた。私は、ちらりと左之助を伺った。左之助は私を見て、にやりと笑う。
「大好きな剣さんがお呼びだぜ」
 あぁ、もう。さっきは体調が悪くて気が弱っていたとはいえ、こんな男にあんな醜態をさらすなんて。自分でしたこととはいえ、恥ずかしくて、穴があったらこいつを埋めてしまいたい。
「これから赤べこに行くのー。一緒に行きましょうー!」
 続いて、薫さんがこちらに声を掛けてきた。私は再び、左之助に眼を向ける。涼しい顔をして、向こうを見ている。けれど。
「お互い様でしょ」
「あぁ?」
「私はいいわ。今日は仕事が出来なかったから、色々やることあるし。はい、これ。みんなで食べなさい」
 私は左之助にお菓子の包みを押し付けると、対岸を向いた。
「ありがとう。でも、ごめんなさい、仕事があるんです。またの機会に!」
 三人に手を振って、私は左之助に背を向けた。最後にほんの少し視線を向けて肩を竦めると、あいつはなんだか呆気にとられたような、残念そうな……少し複雑な顔をしていた。
 何なんだろう、あの反応? まぁ、良いか。

 何気なく西の空を見ると、橙色の光を投げる太陽が、街並みのほんの側まで降りてきていた。頬に触れる光が暖かい。さっきも、あったかかった……。左之助の背中、悔しいけれど、嫌いじゃないのよね。あの馬鹿、口を開けば本当に馬鹿なのに、背中は逞しくて、頼りがいがありそうに見えて。そう、それに、案外優しいところもある。馬鹿だけど。馬鹿だからかしら、ずけずけと人の気持ちに踏み込むし、腹が立つし、気を使わないけれど、その分私も気を使わないから……そうね、気楽なんだわ。あいつといると。肩の力が抜けて、気分が楽になる。弟みたいに思うのは、そういう家族のような気の置けなさからかも知れない。悪くないと思っている自分がいる。
 視界の端に、左之助が見えた。剣さんと何か話している。今日のあいつの夕飯は、牛鍋というわけ。昨日……そういえば、一昨日もうちに食べに来ていた。昨日は、頂いた鰆を焼いたのよね。会津風の味付けが新鮮だとあいつも玄斎先生も喜んでくれて。今日は、筍を煮付けて……こっちでは、どういう味付けにするのかしら。信州は……
「今日の飯はー?」
「今日は、たけの……こ……」
 問われて思わず答えかけた。しかし、思わず振り向く。
「左之助? どうしたの、忘れ物?」
「ん。お前の飯」
「赤べこは?」
「それより、お前の飯だろ」
 当たり前のように言いながら、さっさと私を追い抜いてしまった。「薫さんは?」――口にしそうになって、思わず噤む。今は、聞いてはいけない気がして。
「……日が長くなったわね」
「すぐに暑くなりそうだな」
「そうね。暑いのは苦手だわ」
「あー、お前は会津育ちだしな。俺も信州だけど」
 他愛ない会話をぽつりぽつりと落としながら、私達は沈み行く夕陽を眺めて歩いた。私は、左之助の背中を見ていた。並んだ影は、東にずっと伸びてゆく。
 星よりも輝く川面。暖かな光。美しくて、ほんの少し物足りない。夕陽のような彼の髪の色を思い、少し、胸が痛む。不意に、左之助は足を止めた。
「どうしたの?」
「……お前が剣心を好きなの、なんか解るな」
 まだ言うか。
 そうでしょうよ。あんたも……同じなんだものね。
 私が隣りに並ぶと、また歩き出す。そうして左之助の影の中にいて、夕陽が見えなくなって、さっきより、満たされてゆくような不思議な感覚を覚えた。
「ま、お前みたいな跳ね返りじゃ、難しそうだけどな」
「ふん」
 私は、肘で左之助の脇腹を小突く。
「ってーよ。この女狐」
「五月蝿いわね。タダ飯食べに来るくせに」
「昼間世話してやっただろ」
「それは昨日、一昨日のお礼かと思った」
「女狐」
「語彙が少ない」
「るせー」
「筍、信州風に炊いてあげる」
「会津風で良いって。あれ、旨い」
「天ぷらにしようかしら」
「それも良いな」
 西に紅い光を残しながらも、東の空は紺色に染まり、浮かんだ星が左之助に光を注ぐ。左之助の笑顔が、仄かに輝いて思わず目を反らす。――馬鹿だけど、背中だけじゃない、かもね。
 馬鹿だけど、私と同じように複雑な気持ちを抱えている男。悪くないなと思う。
 伸ばされた指が、頬に触れる。暖かく、同じ鼓動を刻んでいる。やっぱり、悪くない。




 私は闇の中を彷徨った、科人。
 神や仏だって、私を許しはしないかも知れない。だけど、誰にも禁じることは出来ない。私が、左之助が、人を想う、事。
 “アイシテル”――
 
神様は何も禁止なんかしてない。
誰かが誰かを愛すること。
例え、どんな過去を背負っていても。



INDEX

広告 [PR]スキンケア  転職 化粧品 無料 ライブチャット