意外な組み合わせっつーか。
 ごめん、正直、二度と関わりたくないと思っちまった。


     黒い星の賛歌


 俺の名はサンジ。今や世界的に有名になった「麦わら海賊団」のコック。俺の首にも七七○○万ベリーの賞金が懸かってる。華麗な足技で敵を薙ぎ倒す“黒足のサンジ”とは俺の事だ。本当は、もっと高額の賞金がついても良いくらいなんだがな。海軍や政府の奴らも見る目がねぇな。
 おっと、手配書は見ないでくれよ。実物を見ねぇと俺の凄さは解らねぇぜ?
 俺が世界的な賞金首になったのは、なんと言っても“エニエス・ロビー”の決戦だ。我が船の麗しき考古学者のレディが、自らの命を投げ打ってまで俺達を助けようとしてくれた。だが、それをみすみす見逃すような奴は俺達の仲間の中にいる訳がねぇ。勿論、俺の見事な戦いっぷりや知略的な作戦もあって、愛しいロビンちゃん奪還に成功した。
 たった八人と、海賊としてはかなり少数だが、全員が賞金首の実力派って訳だ。おっと、海賊だからって、略奪・強奪何でもござれの品のねぇ野郎共と一緒にすんなよ。俺達――少なくとも俺は、何をするにもスマートで品がなくちゃいけねぇと思ってる。特に、レディに対しては。美しい女性に対して、乱暴な真似をするようじゃ男とはいえねぇ。美しいロビンちゃんを殴って髪を掴んで引きずり回したクソ野郎を蹴り倒せなかったのは心残りだ。まぁ、特に顔に傷も残らず、微笑むロビンちゃんがいてくれるから、そこは我慢するか。

 この一味にレディは二人。健康美あふれる快活なナミさんと、神秘的な色気を醸す理知的なロビンちゃん。
 対照的な二人だが、二人とも素敵だ。
 が、ロビンちゃんは、どうにも不思議な女性で、いまいちつかみ所がない。大人っぽくて凛としているかと思えば、時々途端に幼い少女のようにあどけない貌で笑ったりする。今まではなんとなくみんなと距離をとってたけど、これからはもっと色んな彼女を見たい。

 だが、俺は一味の狙撃手・ウソップの工場本部から、ロビンちゃんの楽しそうな声を聞いて、妙に気になった。
「あら、可愛いわね、これ!」
 部屋の中から、聞いたことねぇくらい驚いて喜んでるロビンちゃんの声が聞こえたら、胸がざわついてきた。
「だろ? やっぱ、ロビンは解ってくれると思ってたんだ」
 なんだ、その口説き文句は。お前、故郷の村に待っててくれるお嬢さんがいるとか言わなかったか?
 何を、俺のロビンちゃん口説こうとか考えてんだよ?
 しかし、入ろうにも、鍵がかかっていて入れない。
 多分、以前、クソ剣士――ゾロの奴が勝手に入った時に途中だった実験が爆発して大変なことになったからだ。人が勝手に入れないようになってるんだろう。仕方ねぇ。ノックするか。
「ロビンちゃん、ウソップ、おやつ用意したぜ」
 取り敢えず、此処からさり気なくロビンちゃんを連れ出そう。
「あぁ、解った」
 ウソップが答えた。が、
「俺はもうちょっとやってから行くから、先に行ってろよ」
「いいえ、私も良いわ。それより、見ていても構わない?」
「あぁ、勿論だ」
 そんな会話が聞こえてきたかと思うと、
「俺達、別に後で良いから、先に食っといてくれ!」
 だと。あぁ!? なにが“俺達”だ。
「ルフィの奴が食っちまうぜ」
「それならそれで」
 と、答えたのはあろう事か、ロビンちゃん。俺のお手製スィーツより、ウソップの作る武器の方が魅力的なのか!?
 大体、ロビンちゃん、武器使わないし。自分の使わない武器を見てるのが面白いのかぁ……
 やっぱ、掴めねぇ。ちょっと近付いた気がしてたんだけど、ふとした瞬間に遠のいていく感じが切ない。
「あら、これ動くのね!?」
「そうさ。イイ感じだろ?」
「ふふ、くすぐったい」
 うぉっ。可愛いっつーか、艶かしい声がっ。何やってんだ、ウソップ。可愛いとかくすぐったいとか、武器じゃねぇのか? 何作ってんだ。
「これ、どうなってるの?」
「身体の動きに合わせて動くようになってんだ。ちょっと、手ぇ貸してみろよ」
 おいおいおい、触んじゃねぇぞ!
「本当、凄いわね」
「あ〜、ホントに喜んでくれる奴がいるとは思わなかったぜ」
「どうして? 凄いじゃない。器用よね」
「まぁな、俺様にかかればこのくらい朝飯前だ」
「一番器用なんじゃない?」
 嬉々としてウソップを褒めるロビンちゃんの声を聞くと、ずっしりと気が重くなる。よりにもよって、ウソップかぁ。まさかこんなところで株を上げてるとは思わなかったぜ。
「いや、サンジやチョッパーも器用だぜ。まぁ、少なくともサンジにこれは作れねぇけどな」
 あんだと、こら。テメェに作れて俺に作れねぇわけあるか。
「そうなの。これ、一つ貰っちゃ駄目かしら? 何かお礼をするから」
 お礼ー!?
 レディがするお礼つったら、ほっぺにちゅぅとかだろ!?
 もしかして、もっと凄い事色々されちゃうかもじゃねぇの!?(俺だったらするぜ)
 ロビンちゃん、そんなにウソップの作るものが気に入ったのか〜!?
「礼なんか良いよ。一応俺の武器だから、大事にしてやってくれよ。あと、ナミには見付かんないようにな」
「解ったわ」
 何なんだ、この「二人の秘密」みたいな雰囲気は。くっそぉ。つーか、お前が紳士っぽくて腹が立つ。
「こっちは本物なんだけど、こういうのももしかして好きか?」
 本物?
「本当! こっちも可愛いわね。こういうのは作らないの?」
「考えてはいるんだけどな。二本増えるだけで違うんだよ」
「そう、難しいのね」
「まぁな。結構繊細な作業なんだ」
 何を見せてんだかなぁ。早く出てくりゃ良いのに。
「これがあるから、みんなを此処に入れないの?」
「それもある。ルフィとかチョッパーは気にしないから良いけど、な……」
 何の話だ?
「でも、私は入れてくれるのね」
「あぁ、こういうの、嫌いじゃねぇみたいだし」
 だから、なんだよ? あー、気になる。
 てか、何で俺、こんなに二人の事気になってんだろ? こんなことでむかむかしてる自分が馬鹿みてぇだ。キッチンに戻るか。――と、思っていたのだが。
「あっ」
 ロビンちゃんの悲鳴が小さく聞こえた。
「あっ……ん……」
 しかも、艶かしい。何やってんだ、ウソップ!?
「服の中入ったのか?」
「ン……」
「あぁ、動くな動くな! 自分で取れるか?」
「大丈――ぁあっ、ん……くすぐった……」
 何が入ったんだ、おい。オイこら、ウソップ、ロビンちゃんに触ってんじゃねぇだろうなぁ!!!!!!
「ひぁっ……や……」
「だから動くなって。他のも入っちまうぞ!」
「はぅっ……ん……くすぐったいっ」
 仔猫が転げるような愛らしく、艶っぽい声。逆にこれでどうも思わねぇ男がいたら見てみたいくらいだ。
「あー、じっとしてろ、ロビン!」
 って、ドサクサに紛れて何しようとしてんだ、この長っ鼻!!!!
 そう思ったときには、既に俺はウソップ工場本部のドアを蹴り壊して、工場の中に踏み込んでいた。多分、心の中で思った事もそのまま口に出して叫んでいたと思うが、その辺の記憶はない。床にしどけない姿で横たわるロビンちゃんと、その横に仁王立ちしてるウソップ。二人の周りには、黒光りして蠢く数十匹の、ゴキ――

 次の瞬間、俺の絶叫が船を揺らした事だけは覚えている。





 俺の声を聞いてアクアリウムバーから他のみんなが駆けつけ、ナミさんが俺と同様に叫んだ。それから、俺とウソップとロビンちゃんはキッチンでみんなに逐一事情を説明する事になった。
「だから、あれは黒光り星って新しい武器なんだよ。全部おもちゃだ」
「でも、ちゃんと動くのよね。本物みたいよ」
 嬉々として説明するロビンちゃん。可愛い貌して、勘弁してよ。ウソップが俺には作れないっつったのは、俺が嫌いだからって事だな……。
「で……あー。えっと、ロビンの背中にそれが入ってロビンが悲鳴上げて」
 いや、あれは悲鳴というか……。もう、色っぽくて可愛くて。耳元で聞いたら絶対理性ぶっ飛ぶってくらいヤバイ声だったが。
「そんで、悲鳴を聞きつけたサンジが飛び込んできて、あの状態ってわけだ」
 大方そんなもんだが、意外と気の利くウソップは、俺が不利になりそうな話は省いてくれてる。多分、ウソップだって解ってんだろ。俺がロビンちゃんのあのヤバイ声に惑わされた事くらい。
「もう、あんなもん作んないでよね、人騒がせな!」
「いや、だから武器だって言ってんだろ!?」
「問答無用!」
「じゃぁ、今度はタランチュラにしてみたら?」
 と、ロビンちゃん。
「だから、八本足は難しいんだぜ?」
「挑戦してみなきゃ」
 あぁ、そういう事か。さっき言ってた「二本増える」って足の話……って、
「ウソップ、お前、タランチュラ飼ってんのかっっっ!!!???」
 俺とナミさんは、壁際まで後ずさった。

 その後、俺とウソップがナミさんにこっぴどくしかられたのは言うまでもない。
 ついでに、ウソップからあれを一個もらうという話をしていたロビンちゃんもどやされた。
 結局、ロビンちゃんはもらうのをやめたようだ。



「ロビンちゃん、服の中に入ったものって、能力で取れないの?」
「取れるけど……背中、弱くてね。くすぐられると身体に力が入らなくなるのよ」
 内緒ね、と、はにかんで口に人差し指を当てる姿の愛らしさ。普段、艶めかしい色気があるのに、ふとした瞬間に見せるこのギャップがたまらねぇ。
「へぇ……」
 何気なく、背骨を人差し指で撫でてみる。と、
「ふぁっ」
 甘い声が唇から漏れて、身体をくねらせた。やべぇ、これはそそられる。っつーか、ウソップの奴、こんな姿独り占めしてたのかよ。後で蹴り飛ばしてやる。
「あっ、ぁん……やめ……」
 病み付きになりそう。力なくぐったり俺に身を寄せてきたロビンちゃんの背中にもう一方の腕を回した時。そのシャツの下から、ポツリと落ちてきたのは、ゴキ――








 俺はこの日ほど、みんなに迷惑をかけたと思った日はない。
「黒光り星」とサンジ(もしくはナミ)は、多分誰もが一度は考えたはず。
ロビンちゃんのセクシィ・ヴォイスを、ウソップ独り占め。
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